元住吉のカフェで聞こえた「時代遅れ」なエリート学生の会話。AI時代に「手を動かすこと」だけを神聖視する危うさ

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受験の意義・進路

Last Updated on 2025年12月17日 by 受験おじさん

先日、仕事の合間に元住吉駅近くのカフェで作業をしていた時のことです。

私の隣の席に、おそらく近隣の大学に通っていると思われる、垢抜けた男子学生2人組が座りました。

彼らはノートパソコンを広げ、意識の高そうなビジネスや将来のキャリアについて熱く語り合っていたのですが、その会話の中に、思わず私が耳を疑うようなフレーズがありました。

「やっぱりさ、プログラムをがっつり組んでたっていうんだったら見込みあるけど、データ分析なんてお話にならないよね」

これを聞いた瞬間、私は20年前にタイムスリップしたような錯覚に陥りました。

私が大学生だった2000年代初頭なら、その会話は正解だったかもしれません。

しかし、今は2025年です。

生成AIが実用化され、ホワイトカラーの仕事の定義が根底から覆りつつある今、その発言はあまりにも「危なっかしい」。

彼らは間違いなく、偏差値も高く、地頭の良い学生たちでしょう。

しかし、優秀であるがゆえに陥っている「ある致命的な勘違い」があるように感じました。

今回は、この元住吉での出来事をきっかけに、これから大学を目指す君たちに向けて、「AI時代に本当に価値のある『賢さ』とは何か」について、少し厳しい現実と、希望の話をしたいと思います。

「難しいスキル」=「価値がある」という偏差値エリートの罠

彼らの会話から透けて見えるのは、「汗をかいて習得した技術こそが偉い」という価値観です。

「プログラムをがっつり組む」。

確かに響きはかっこいいですし、これまではそれがエンジニアとしてのステータスでした。

何百時間もかけて構文を覚え、エラーと格闘し、複雑なシステムを組み上げる。

その努力は尊いものです。

しかし、ビジネスの現場、特にここ数年の変化を見てきた私からすると、その領域こそが「最もAIに代替されやすい(価格破壊が起きる)場所」になりつつあります。

コードを書くのは「人間」の仕事ではなくなる

私はプログラミングに関しては素人です。

しかし、今の私はAI(GeminiやChatGPT)という相棒に指示を出すことで、自分が欲しいツールやシステムをものの数分で作り出すことができます。

  • 学生の視点: 自分で一からコードを書ける人がすごい。
  • ビジネスの視点: 誰が書いたかはどうでもいい。動くモノを早く作った人がすごい。

彼らが「見込みがある」と評価した「プログラムをがっつり組む能力」は、今後、電卓があれば誰でも計算ができるようになったのと同じように、「AIがあれば誰でもできるコモディティ(ありふれた能力)」になっていきます。

優秀な学生ほど、「習得に時間がかかる難しいこと」に価値を感じがちです。

なぜなら、彼らは受験勉強という「時間をかけて難問を解く競争」で勝ってきた成功体験があるからです。

しかし、社会に出た瞬間にルールは変わります。

「どれだけ苦労したか」ではなく、「どれだけ価値を生んだか」しか問われません。

AIを使えば一瞬で終わる作業を、手作業でやっていることを自慢するのは、今の時代において「ショベルカーがある現場で、スコップの使い方が上手いことを自慢している」のと変わらないのです。

■ 誤解しないでほしい。「技術」や「知識」は絶対に無駄にはならない

ここまで「プログラムを書く作業自体はAIができる」と厳しいことを言いましたが、勘違いしてほしくないのは、「じゃあ、プログラミングや専門知識を学ぶ必要はないのか?」というと、それは絶対に「NO」だということです。

むしろ、これからのリーダーには、これまで以上の深い知識が求められます。
なぜなら、自分自身にその技術や知識がなければ、AIが作ってきた成果物が「本当に良いものなのか」、あるいは「バグを含んだ危険なものなのか」を判断(監査)できないからです。

「プレイヤー」としては稼げないが、「監督」としては必須

例えば、料理を全くしたことがない人が、プロのシェフに的確な指示を出したり、料理の味の微妙な違いを指摘したりできるでしょうか? 不可能ですよね。
プログラムも同じです。基礎を知っているからこそ、「ここはAIの書き方だと効率が悪いな」「このロジックだとエラーが起きる可能性があるな」と気づくことができます。

●これまで:
その技術を使って、自分が汗をかいて作ることでお金を稼いでいた。

●これから:
その技術知識を使って、AIが作ったものを「監査(チェック)」し、品質を保証することに価値が生まれる。

私が言いたいのは、「自分で手を動かして納品する」というビジネスモデルで稼ぐのは、今の時代、非常に難しくなっている(AIという無料のライバルが強すぎる)ということです。

しかし、そこで培った能力は、AIを使いこなすための「審美眼(目利き力)」として、形を変えて必ずあなたの武器になります。だからこそ、大学で基礎からしっかりと体系的に学ぶことには、大きな意味があるのです。


彼らが切り捨てた「データ分析」こそ、AI時代の主戦場

一方で、私が最も危惧したのは、彼らが「データ分析はお話にならない」と切り捨てた点です。

もし彼らが、「単純なデータ集計作業(エクセルへの入力など)」を指してそう言ったのであれば、一理あります。それもAIが得意な領域だからです。

しかし、もし

「データからインサイト(洞察)を導き出すこと」自体を軽視しているのだとしたら、それは致命的な判断ミスと言わざるをえません。

AIは「計算」はできるが、「問い」は立てられない

AIは、膨大なデータの中からパターンを見つけたり、グラフを作ったりするのは人間より遥かに得意です。

しかし、どうしてもAIにできないことが一つだけあります。

それは、「なぜ、その分析をするのか?」という『問い』を立てることです。

  • 「この数字が下がっているのは、もしかして顧客のこういう心理変化が原因じゃないか?」
  • 「このデータとあのニュースを組み合わせたら、新しい需要が見えるんじゃないか?」

こうした文脈(コンテキスト)を読み解く力や、数字の向こう側にいる人間の感情を想像する力は、人間にしか持ち得ないものです。

プログラムのコードという「正解のある記述」はAIが代行できます。

しかし、データ分析の結果を見て「じゃあ、次はこうしよう」と意思決定(決断)をするのは、責任を取れる人間だけの特権です。

彼ら学生は、目に見える「モノ作り(コーディング)」の派手さに目を奪われ、その裏にある「意思決定(データ分析と戦略)」という、より上流の、より人間にしかできない仕事の価値を見誤っているように見えました。


国立大学を目指す君たちに、本当に身につけてほしい能力

私がこの話を、あえて受験生の君たちにするのには理由があります。

私は、大学に行くことには大賛成です。

私自身、横浜国立大学で過ごした時間、そしてそこに至るまでの浪人生活で得た経験は、40歳を過ぎた今でも私の最大の武器になっています。

ですが、もし君たちが「大学で専門的なスキル(例えば特定のプログラミング言語)を身につければ安泰だ」と思っているなら、その考えは一度捨ててください。

ツールの使い方は、卒業する頃には古くなっている可能性があります。

国立大学、特に難関大と呼ばれる大学の入試問題が求めている能力を思い出してください。

  • 共通テスト: 膨大な情報の中から、必要な要素を素早く抽出し、処理する力。
  • 二次試験(記述): 正解のない問いに対し、論理を積み上げて説得力のある答えを導き出す力。

これらはすべて、「AIを使いこなすための基礎体力」そのものです。

「作業者」ではなく「設計者」を目指せ

これからの時代、高学歴の人間が目指すべきは、「誰よりも速くコードが書ける高級な作業員」ではありません。

AIという優秀な部下(ツール)に的確な指示を出し、彼らが作ったアウトプットを評価し、それを社会の価値に変える「設計者(アーキテクト)」や「指揮官」になることです。

私が横浜国立大学に合格できたのは、元々頭が良かったからではありません。

現役時代、成績が悪かったからこそ、「どうすれば効率よく点数を取れるか?」「出題者は何を求めているか?」を必死に分析し、戦略を立てたからです。

この「分析し、仮説を立て、戦略を実行する」というプロセスこそが、AI時代に生き残るための最強のスキルです。

元住吉のカフェで見かけた彼らは、もしかしたら「大工仕事」の腕を磨くことに夢中で、「どんな家を建てるか」を考えることを忘れているのかもしれません。

君たちは、そうならないでください。


結論:受験勉強は「AI時代」への準備体操だ

受験勉強は辛いと思います。時には「こんな公式を覚えて何になるんだ」と思うこともあるでしょう。

確かに、公式そのものはAIが知っています。

しかし、

  • その問題を解くために「論理的に考える回路」を脳内に作ること。
  • 苦しい時に逃げずに「正解へのルートを探し続ける粘り強さ」。

これらは、AIには決してコピーできない、君だけの資産になります。

今、君たちが目指している大学という環境は、そういった「本質的な思考力」を鍛えるには最高の場所です。

流行りのスキルに飛びつくのではなく、まずはどっしりと、その思考の土台を作ってください。

20年後、君たちが社会の中心になった時、「プログラムを書くのはAIだけど、何を作るか決めるのは俺たちだ」と胸を張って言える大人になっていることを願っています。

今はまず、目の前の模試の結果を「データ分析」して、次の「戦略」を立てるところから始めましょう。 それこそが、将来の君を助ける第一歩になるはずです。

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